第175回
山崎 昶先生が答える化学質問箱
回答者プロフィール
やまさき・あきら
1937年生まれ.東京大学理学部化学科卒業.
元日本赤十字看護大学教授.
おもな著書に「化学の常識なるほどゼミナール」「落語横丁の化学そぞろ歩き」「機密保持と化学」「ミステリーの毒を科学する」,訳書に「化学するアタマ」「先生を困らせた324の質問」「サイエンティスト ゲーム」「続 サイエンティストゲーム」など多数.
山崎 昶先生が答える化学質問箱
第175回 (2017/11/01更新)rss
Q.

 「ラハール」ってどんなものですか?

Q.

 「軽石」って海の中でもできるのでしょうか?

Q.

 落語の演題にもなっている「花色木綿」,この「花色」って今のどんな色に当たるのでしょう?

「化学の疑問」募集中 !!

このコーナーではみなさまから化学にまつわる質問を募集しています.
山崎昶先生に聞いてみたい質問をメールにてお寄せ下さい.
eigyoukagakudojin.co.jp
スパムメール防止のため@は全角で表示しております.送信の際に半角に修正していただけますようお願い申し上げます.

件名は必ず「化学質問箱」 としていただき,下記必要事項をお知らせください.
お名前,住所,TEL,年齢,ご職業,ご質問

*他サイトとの二重投稿はご遠慮ください.判明した場合は回答いたしません.
*学校の宿題は,まずは自分で考えましょう.

Q.

 「ラハール」ってどんなものですか? なんでも火山に関係がある言葉らしいんですが.

A.

 これはもともとインドネシア語に由来しているようです.火山関連の専門語彙は,活火山の多いイタリア語あたりに由来のものが大部分なのですが,これは別格です.
 噴火に伴う「火山砕屑物」が大量の水分とともに山腹を流れ下るのですが,流下スピードは極めて速く,時速100 kmを超えることもあるそうです.その結果,大規模な被害をもたらすことが少なくないのですが,この水分の供給元としては,火口湖あるいは頂上付近に堆積している積雪,さらには氷河の氷などがあげられます.以前わが国では「火山泥流」という言葉がこれを指すものとして使われてきたのですが,これは時代や分野によって意味の変遷があるらしく,現在ではもっぱらカタカナの「ラハール」が普及しているようです.
 わが国でも,明治の磐梯山の大噴火(1888)に伴って大規模なラハールが発生したことがわかっています.これは噴出物自体に大量の水分が含まれていた例ですが,北海道十勝岳の大正の噴火(1926)の際には,山頂付近の積雪が熱のために融解して泥流が発生したなど,多くの死者が報告されている例は世界中で見ると決して少なくはありません.

Q.

 「軽石」って海の中でもできるのでしょうか?

A.

 火口から噴出したマグマが,空気中,時には水中で急冷状態になったとき,外側だけが固化しても,まだ高温の内部に含まれている(溶解している)気体成分が空洞を作って,やがて外の殻の微細な割れ目から逃げ出したあとに残るいわば「固体の泡」状態になったものが「軽石」なのです.全体としての比重は1よりも小さく,また砕けやすいので,大きなものはあまり見受けないといわれてきましたが,大正13年に起きた沖縄八重山の西表島西北の海底火山の噴火では,何と畳1枚分もあって,大人が何人かのっても沈まないほど巨大な軽石もあったそうです.
 八重山諸島の漁港は,この噴火による大量の軽石のおかげで何ヶ月か使用できない状況が続いたそうですが,その間に軽石の方ははるか北海道の礼文島にまで海流によって運ばれたということです.この漂着状況から,それまで一部が未解決であった黒潮(日本海流)の動きや流速もかなり解明されたというのは,結構有名な話だったのですが,1世紀近くもたつと,もはや昔話になってしまったのかもしれませんね.

Q.

 落語の演題にもなっている「花色木綿」,この「花色」って今のどんな色に当たるのでしょう?

A.

 木綿の布地を藍で染める際には,染液の濃さと浸漬時間次第でいろいろな色合いの青系統の色になるのですが,この「花色」はいわゆる「青花」,つまりツユクサの花の色で,もともとはかなり明るい青色です.ホンモノのツユクサの花の液は,友禅染などの下絵描きにも使われますが,水洗いで簡単に落ちてしまうので,長持ちすることが望まれる実用品の染色には向いていません.衣服の裏地や布団のがわ(額縁)など,広い用途があるのは,他の色の場合よりも汚れが目立たないということなので,そのために「裏は花色木綿で……」というセリフが繰り返されるのは,長屋住まいの独り者の日常をそれとなく巧みに表現しているのです.
 もちろんお隣あたりにお節介焼きのお上さんでもいてくれれば,たまには見かねて洗濯ぐらい代わりにやってくれたでしょう.