新しい工業化学

章末問題の解答

1章 化学工業とは何か

  • 1.1
     汎用品生産から特殊な機能,特殊な用途をもった製品の生産に転換.川上から川下へ.最終製品の生産増加.
  • 1.2
     グリーンケミストリーへの取組み.情報の共有化,コンピュータケミストリー,コンビナトリアルケミストリーの大幅な採用.
  • 1.3
     気候変動に関する国際連合枠組条約第三回締約国会議(京都会議1997,12)の主たる取決め.大気中に排出されるガスの種類,排出量の削減についての数値目標,排出権取引の仕組みとルールなどについての取決めを行った.

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2章 酸(硫酸,硝酸,塩酸,リン酸)

  • 2.1
     石油中に存在するメルカプタン,アルキル硫化物,チオフェンなどの有機硫黄を水素化脱硫することにより得られる硫化水素,排煙脱硫により得られる二酸化硫黄を天然ガスを用いて還元した硫化水素,または天然ガス中に存在する硫化水素を脱水素化することにより硫黄単体を回収硫黄として得ている.
  • 2.2 
  • 2.3
     製品中への遊離塩素の混入を防ぎ,さらに,爆発を防ぐため水素過剰(約10%)の条件にずらしている.

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3章 ソーダと塩素

  • 3.1
     アンモニアソーダ法:Leblanc法に比べてソーダ灰の品質が高く,しかも製造コストが著しく低く抑えられるために現在でもソーダ灰製造の主流となっている.
    塩安ソーダ法:アンモニアソーダ法において生成する塩安を窒素肥料として利用するため,いくつかの工程を省略することができ,しかも捨てられていた塩化カルシウムは生成しないので経済性の高い方法であるが,新たにアンモニア合成設備が必要になる.
  • 3.2
     隔膜法:水銀法に比べて総エネルギー量は低いが,陰極室に流入してくる食塩水のために最終的に得られるカセイソーダ水溶液中に食塩が混入する.
     水銀法:高純度かつ高濃度のカセイソーダが得られるが,ナトリウムアマルガムを生成するために高い槽電圧を要し,総エネルギー量も高くなる.
    イオン交換膜法:電流密度やカセイソーダ濃度の点では水銀法に劣るものの,水銀法に匹敵する品質のカセイソーダを生成させることができる.しかも総エネルギー量は三法の中で最も少なく,省エネルギー型のカセイソーダ製造法である.
  • 3.3
     カセイソーダ1tの物質量は1×106g/40gmol−1=2.5×104molである.式(3.9),(3.10)より,塩素と水素はいずれもカセイソーダ1mol当たり0.5mol生成するから
    塩素:71gmol−1×2.5×104mol×0.5mol/1mol=8.875×105g=0.89t
    水素:2gmol−1×2.5×104mol×0.5mol/1mol=2.5×104g=0.025tとなる.

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4章 水素・アンモニア・肥料

  • 4.1
     原料にはおもにナフサや天然ガスが用いられる.水蒸気改質は二つの工程に分けられ,まず一次改質工程で脱硫された原料を水蒸気と共に加熱し,7〜9%のCH4を含むCOとH2まで転換する.これを適当量の空気と混合し,残存するCH4と一部の水素を空気中の酸素と燃焼させてCO,H2およびN2との混合物(CO2とH2Oも一部含まれる)とする.次に,H2Oとの転化(シフト)反応により,COをCO2とH2に変換し,脱炭酸工程を経てH2とN2がモル比3:1となる混合ガスとする.なお,この工程には無機塩および有機アミン系化合物が炭酸ガスの吸収剤として使用されるが,吸着剤にCO2を圧力を上下させて吸脱着させるPSA法が開発されている.また,このままでは触媒毒となるCOとCO2が含まれているので,メタネーション工程によりこれらは不活性なCH4へ再変換される.
  • 4.2
     窒素ガス(N2)と水素ガス(H2)との直接反応によりアンモニアは生成するが反応は可逆的であり,アンモニアの生成量は原料ガスの分圧に1/2および3/2次でそれぞれ依存する.また,反応は発熱を伴う.そのため,アンモニアの生成は高圧および低温の条件で有利となる.しかしながら,高圧ではプラント設備に費用がかかり,また低温では反応速度が遅いため,反応速度を向上させるために鉄系触媒が使用され,実際の反応は150から300atm,500℃前後の条件で通常行われている.一方,最近開発されたルテニウム系触媒を併用すると,反応圧力をさらに低減できると共に,アンモニア転化率も向上する.
  • 4.3
     窒素肥料,リン酸およびカリ肥料の肥効成分は,それぞれNH4,NO3,H2PO4,HPO42−,PO43−,およびKであり,これらのイオンを含む塩あるいは土壌中で変化しこれらのイオンを生成する物質が肥料として用いられる.すなわち,窒素肥料では硫安,尿素,石灰窒素など,リン酸肥料では過リン酸石灰,重過リン酸石灰,溶成リン肥など,およびカリ肥料では塩化カリウム,硫酸カリウムなどがある.
  • 4.4
     水中に含まれる窒素化合物は,無機態窒素と有機態窒素に大別され,前者はさらにアンモニウム態窒素(NH4),亜硝酸態窒素(NO2)および硝酸態窒素(NO3)に分類される.同様に,水中のリン酸化合物もまた無機態リンと有機態リンに大別され,さらに無機態リンはオルトリン酸塩(HPO42−,H2PO4,H3PO4など)と縮合リン酸塩に分けられる.これらのイオンや塩は,水に可溶であることから藻類などに吸収され富栄養化の原因物質となる.

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5章 無機ファインケミカルズ

  • 5.1
     .▲襯潺縫Ε狎熟M儻粁繊き▲▲襯潺淵殴襦僻粉アルミナ),アルミナ繊維,て光アルミナ,ナ石(ルビー,サファイア),Ε┘譽トロセラミックス(例:IC基板,パッケージなど),断熱材,耐火物,研磨材
  • 5.2
     本文参照のこと.
  • 5.3
     .▲淵拭璽次扮埒軅弌だ喫晶),▲襯船襦紛盥叛弌だ喫晶),ブルカイト(板チタン石,斜方晶)
  • 5.4
     硫酸法および塩素法
    本文参照のこと.
  • 5.5
     光触媒の原理
    酸化チタンに380nmより短い波長の光を照射すると,価電子帯にある電子が伝導帯に励起して電子(e)と正孔(h)の対が生じ,この電子(e)の還元力と正孔(h)の酸化力に基づいてさまざまな光触媒の機能が出現する.一般の物質では,価電子帯の電子が励起されて伝導帯にジャンプしてもすぐに再結合してもとに戻るが,酸化チタン光触媒では,電子が伝導帯に,また正孔が価電子帯に生じた状態(励起状態)が少しの間,維持される.そのために,光触媒としての機能が発現する.光触媒の作用原理については,本文中に示した図5.4を参考にしてほしい.この場合,大気中の酸素と湿気が反応に関与し,伝導帯の電子による還元反応で超酸化物イオン(・O2)が,また価電子帯の正孔による酸化反応でヒドロキシルラジカル(・OH)が生成する.
    還元反応 O2+e→・O2
    酸化反応 H2O+h→・OH+H
    とくに,酸化チタンの光触媒の作用は,電子(e)の還元力よりも正孔(h)の酸化力によっている.
    光触媒の作用
    ヾ超浄化,∪験茣超の改善,9涯檗きに姫・超親水性
    具体的な内容については,本文参照のこと.

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6章 ガラス

  • 6.1
  • 6.2
     (1) 溶融ガラスを液体スズ上に浮かべて水平方向へ引っ張ることにより,上下両面とも自由表面を有する超平坦なガラスが連続的に得られる.通常の用途には研磨の必要がない.
    (2) 板厚も0.4〜25mmの範囲で自由に変えることができる.
    (3) 板幅も最大4mまで可能
    最も重要な点:ガラスを浮かべる液体スズの浴を採用したこと(スズは融点が232℃と低いにもかかわらず,沸点は2480℃と高いので蒸気圧が低く,溶融ガラスと接触する温度でも化学的に安定である.ただし,酸化を抑えるために弱還元雰囲気にする必要がある).
  • 6.3
    【利点】
    ・高温酸素燃焼であり,窒素を加熱する必要がないので効率がよく,燃料の消費量を低減できる.
    ・結果としてCO2, NOXの排出量を低減できる.
    ・蓄熱室が不要となり,建設費を低減できる.
    【欠点】
    ・純度90%以上の酸素を製造するのに費用がかかる.
    ・燃焼炎の温度が2600〜2700℃の高温になるので耐熱性の炉材を使用する必要がある.
    ・燃焼ガスがH2OとCO2のみであるので,ガラスの水分含有量が高くなり,蒸発したNaと水が反応してNaOHが生成し,炉材を浸食する(アルカリ浸食に強い高価なジルコニアれんがを使用する必要がある).
  • 6.4 
    (1) 遷移金属イオンの添加
    (2) コロイドの析出
    ・金属コロイド:金(赤),銀(黄),銅(赤),Se(ピンク)
    ・化合物コロイド:CdS(黄),CdSe(赤),Cu2O(赤),FeS(アンバー)
  • 6.5
     ガラスセラミックスは,いったんガラスにしてガラスの特性を利用して成形した後,結晶化処理によりセラミックス化するので,最終製品に近いかたちで生産することができる.ガラスマトリクス中に結晶を析出させることにより強度は向上する.結晶核形成剤を加え結晶化処理を制御する(核の生成を多くし,成長を抑制する)ことにより透明な結晶化ガラスを得ることができる.

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7章 炭素資源(石油・石炭)

  • 7.1
     構造は本文参照.反応性は飽和炭化水素(アルカン)である石油よりも芳香族である石炭のほうが高く工業原料として利用されたのも早い(ベンゼン環に対するアルキル化やハロゲン化などの多彩な求電子置換反応の存在を考えること).
  • 7.2
     太陽光によって暖められた地球からの輻射熱は波長の長い赤外線である.この赤外線を吸収して熱運動(振動)に変える気体が大気中にあることにより,大気が温められる.この気体としては赤外領域に吸収をもつものであれば温室効果をもつことになる.実は大半の有機物はこの吸収を起こす.ガスの種類については本文参照.
  • 7.3
     新しい油田の発見や,採掘技術の進歩が原因である.可採年数はその時点での技術で採掘して採算が取れる埋蔵量をその年の生産量で割ったものであるため,油田の発見や技術の進歩さらには原油の価格の影響も受ける.
  • 7.4
     (例)フロン;化学的に非常に安定であることから,クリーンな洗浄剤として半導体の洗浄や,コンピュータルームなどの消火剤,無毒であることからスプレー用のガスなどに広く利用されたが,その安定性が原因で成層圏にまで分解せずに到達してオゾン層を破壊してしまった.強烈な紫外線でフロンのC-Cl結合が分解して生成したラジカルが連鎖的にオゾンを分解する.成層圏に到達するのに長年を要するためその因果関係や,対策が立てにくいこと,および予想外の環境破壊につながった例として教訓にすべき例である.

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8章 石油精製

  • 8.1
     (1) 水素の加圧条件下,高沸点石油留分を分解してガソリン留分に転換する方法.(特徴)通常分解されにくい軽油や残油の処理が可能になる.コークス生成が抑制される.

     (4) 重質ナフサを固体酸触媒を用いて芳香族,イソパラフィンなどの高オクタン価ガソリンに改質する.(カチオン転位機構)
     (5) (b)
  • 8.2
     接触分解はカチオン機構で進行し,反応途中で生成するカチオンはより安定な枝分れの多いカチオンに異性化する.したがって,エチレンの生成はほとんどない.一方,熱分解はラジカル機構で進行し,反応過程で生成するラジカルの異性化(転位)が遅いため,末端一級ラジカルからのβ開裂により生成するエチレンが多く見られる.
  • 8.3
     直留ガソリン,改質ガソリン,分解ガソリン,アルキレートガソリンのそれぞれの製造過程を理解すること.詳細は本文.

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9章 石油化学

  • 9.1
     シクロヘキサンの酸化で得られたシクロヘキサノンをオキシムに変換し,その後硫酸を用いてBeckmann転位させε-カプロラクタムを合成,それを重合させナイロン6を製造する.ほかの方法としては光ニトロソ法などもある.
  • 9.2
     ベンゼンのプロピレンを用いたアルキル化でクメンをまず合成する.得られたクメンを酸素酸化し,クメンヒドロペルオキシドに変換し,それを酸で分解しフェノールを合成する方法.
  • 9.3
     プロピレンをアンモニア存在下,空気酸化し,プロピレンから一段階でアクリロニトリルを合成する方法.青酸,アセトニトリルの副生を伴うため,それらの利用が重要となり,アセトンからのアセトンシアノヒドリン製造プロセスを並行して行い副生成物の青酸の利用を図っている.

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10章 メタノールの化学

  • 10.1
    (1) 炭素資源としての普遍性;メタノールは合成ガスさえ入手できれば合成できる.また合成ガスはどのような炭素資源からも製造できる.
    (2) 合成原料としての汎用性;メタノールを原料にしてC5までのオレフィンや芳香族化合物を容易に合成できるために,現在の石油化学のプロセスを変更することなしにさまざまな製品を製造することができる.
  • 10.2
     比較的入手しやすい炭素数1の化合物,たとえばメタン,メタノール,一酸化炭素あるいは二酸化炭素などを原料として,炭素数2以上の有機化合物を合成する化学である.目標となる有機化合物の中にはガソリンなどの炭化水素も含まれる.
  • 10.3
     酢酸合成法はその時代の主要な炭素資源と密接にかかわってきたといえる.すなわち,本格的な化学工業が成立する以前,酢酸は発酵や木材の乾留など生物資源の加工のかたちで製造されていた.しかし,工業化の進展に伴い大量の酢酸が必要になっていったが,これらのプロセスでは酢酸を一度に大量生産することはできなかった.
    ついで石炭化学の時代になり,アセチレンが大量に利用できるようになった.ここでアセチレンへの水和によりアセトアルデヒドを合成し,さらに酸化して酢酸を大量生産するプロセスが登場し,需要の増大を賄うことが可能となった.しかし,アセトアルデヒドの製造プロセスで水銀を使用するために公害問題を引き起こした.
    やがて石油化学の時代になり,Höchst-Wacker法の開発によって,エチレンからより低コストでアセトアルデヒドが供給できるようになった.そのためコスト面でもアセチレン法は太刀打ちできなくなり,エチレン法全盛の時代となった.エチレン法では引き続きアセトアルデヒドを酸化して酢酸とするプロセスが使用されたが,アセトアルデヒド合成プロセスおよび酢酸合成プロセスはともに酸化反応であるため,燃焼反応などの副反応の制御に困難を伴う.したがって,最終製品である酢酸の収率および選択率を高くすることができなかった.
    一方,Monsanto法は,メタノールから一段階で酢酸を合成でき,選択率・収率ともに高い合成法である.したがってコスト的にも原料多様化に関してもメタノール法がエチレン法より優位になった.このような経緯で酢酸合成法は原料および製法の転換を繰り返したということができる.
  • 10.4
     メタノール原料である天然ガス資源は,日本国内に豊富に存在するわけではない.したがって,メタノールを合成するためには海外から天然ガスを輸入する必要がある.輸入の際には日本が島国であるため,産出国からの海上輸送が必要になる.天然ガスは常温で気体であるが,気体のままで輸送するのはパイプラインが敷設されていない場合,密度が低いためにエネルギーロスが大きくなる.したがって,低温で液化した後に海上輸送することになるが,液化時および輸送中に低温を保つためのエネルギーが必要になる.
    一方,メタノールは常温で液体であり,輸送は常温常圧で可能である.したがって圧縮や冷却する必要がないため,天然ガスを輸送する場合に比べてエネルギー消費量は格段に少ない.したがって天然ガスとして輸入するよりメタノールとして輸入したほうがグリーンケミストリーの概念にあっている.

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11章 汎用性高分子

  • 11.1
     非晶性のポリマー分子は互いに絡み合い,温度によって硬いガラス状態と弾力性のある軟らかいゴム状態を示し,光学的に透明である.結晶性ポリマーは,一般に融点が高く,存在する微結晶による光の散乱のために,不透明ないし半透明である.
  • 11.2
     熱によって流動性が生じる性質が熱可塑性であり,この性質をもつ合成樹脂を熱可塑性樹脂とよばれる.一方,加熱反応によって分子間架橋を起こし硬化する性質が熱硬化性であり,その合成樹脂は熱硬化性樹脂とよばれる.
  • 11.3
     ポリ塩化ビニルのような熱変形温度が高い高分子では,そのままでは加工が容易でないので,可塑剤を加えガラス転移点を下げる.
  • 11.4
     高圧下でのエチレンの重合では,ポリエチレン分子鎖に枝分れが発生し,結晶性が乏しく,密度の低いポリエチレンが生成する.低密度ポリエチレンは,透明性,柔軟性,および弾力性に富み,フィルムやシートに加工されることが多く,また電線やケーブルの被覆にも用いられている.一方,穏和な条件でZiegler触媒によるイオン重合を行うと,結晶性の高密度ポリエチレンが得られる.高密度であるため,機械的強度,硬度,軟化点などが向上し,ボトルや半透明のフィルムなどに加工される.
  • 11.5
     ポリ塩化ビニルの廃棄燃焼処理過程で塩素,塩化水素,ダイオキシンなどが発生するため,環境問題となっている.また,その可塑剤であるフタル酸エステル系化合物は内分泌攪乱物質(環境ホルモン)である疑いがある.そのため,廃棄(とくに燃焼処理)せずに再使用する努力が必要である.
  • 11.6
     ポリスチレンは非晶質で透明性に富み,溶融時の粘性が低く加工しやすい.また,剛性にも優れている.
  • 11.7
     ナイロン繊維は,天然繊維である絹フィブロインなど同じポリアミドで,水素結合により分子間相互作用が大きく,また紡糸により分子が配向するため,強度,耐摩耗性や弾性に優れ,衣料品や工業用繊維として利用される.
  • 11.8
     高分子が非晶性であれば,分子鎖は容易に滑り合うが,この分子鎖を架橋すると,もとの状態に戻る力が働き,弾性を示すようになる.すなわち,適当な枝分れのある直鎖状高分子を架橋するとゴムとなる.
  • 11.9
     ジエン系合成ゴムには多量の不飽和結合(C=C結合)を含むので,オゾン,酸素,熱などに対して耐久性が乏しい.その欠点を克服するため,適当なコモノマーとの共重合または水素添加により二重結合の数を減らす.
  • 11.10
     プラスチックの使い捨ては,環境破壊や石油資源の枯渇をもたらすので,汎用高分子のリサイクルが不可欠である.とくに,マテリアルリサイクルが重要であり,そのためには分別回収を徹底しなければならない.

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12章 機能性高分子

  • 12.1
     熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとり,溶融しないので,回収してもそのまま再使用できないが,熱分解によりモノマーレベルでの原料に戻すことは可能である.
  • 12.2
     バンドモデルに従うと,I2, AsF5などのドーピング材をポリアセチレンに少量添加することにより,ポリアセチレンの価電子帯から電子が引き抜かれ(酸化され)正孔が発生することにより導電性になる.
  • 12.3
     図12.5を参照.
  • 12.4
     孔径0.1nm以下の膜に海水を満たし浸透圧以上の圧力(50〜60気圧)を加えると,水のみが膜を透過し,NaClなどの塩類はあとに残る.
  • 12.5
     図12.9参照.
  • 12.6
     微生物の中には,自己保存のため脂肪族ポリエステルを生合成し,体内に蓄積し,栄養源がなくなると,蓄積した脂肪族ポリエステルを酵素分解し栄養源に変えるものがある.通常の酵素では芳香族ポリエステルは分解できない.脂肪族ポリエステルはその構造上,ガラス転移点(T)が低く,耐熱性に劣る.

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13章 有機ファインケミカルズ(1) (界面活性剤)

  • 13.1
     図13.5を参照.
  • 13.2
     図13.7および13.6.1(c)の記述を参照.
  • 13.3
     実際の工業においてはアニオン性界面活性剤と両性界面活性剤とを必須成分とし,目的に応じて非イオン性界面活性剤をさらに組み合わせるのが一般的である.アニオン界面活性剤を用いる理由は洗浄力および起泡力がほかの界面活性剤に比べて優れるからであり,一方の両性界面活性剤が用いられる理由は,アニオン性界面活性剤の洗浄力や起泡力を相乗効果によってさらに高めるためである.実際に液体洗浄剤を配合する場合には皮膚刺激を低減したり,保存時の安定性を向上する目的で非イオン性界面活性剤を組み合わせる場合が多い.好適な具体例としては,環境負荷も考慮すると以下の界面活性剤があげられる.
    アニオン界面活性剤:MES,AES,アミノ酸系界面活性剤など
    両性界面活性剤:アミンオキシド,アルカノイルアミドプロピルベタイン
    非イオン性界面活性剤:アルキルポリグルコシドなど
  • 13.4
     α-スルホ脂肪酸塩,天然原料由来の疎水基を有するアルキル硫酸エステル塩,アルカノイルアミドプロピル酢酸ベタイン,ショ糖脂肪酸エステル,アルキルポリグルコシドなど.

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14章 有機ファインケミカルズ(2) (医薬・農薬)

  • 14.1
     Cは分子中に鏡面があり,分子の半分が残りの半分の鏡像になっているため光学活性でない.これをメソ体という.
  • 14.2
     β-ラクトンは分子内でエステル化すればできる.同様に考えて,β-ラクタムは分子内でアミド結合を形成すればよい.しかし,環のひずみがあるぶんだけいずれも反応は進行しにくい.
     
  • 14.3
     まず,光や酸素に対する安定性を増すため,供役した二重結合を減らした.次に,アルコール部の不斉炭素をなくし分子の構造をより簡単にするために,より安定で供給しやすいフェノキシベンジルエーテル誘導体とした.さらに,天然物に特徴的で合成しにくい三員環をなくし,より簡単な構造にしている.

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15章 グリーンケミストリー

  • 15.3
    従来反応式:110/(110+0.5×132+2×151+72+18)=19%
    新反応式:110/(110+18)=86%
  • グリーン・サスティナブルケミストリーネットワークの活動
     グリーン・サスティナブルケミストリーネットワーク(Green Sustainable Chemistry Network; GSCN)についてはホームページ:http://www.gscn.netで活動状況を知ることができる.現在までの活動としては2000年10月に東京でOECDのGSCワークショップの開催,2002年4月に日本で第1回GSC賞の授与,2002年9月には「イニシアティブGSC-21提言書―化学技術の挑戦―」の発行,2003年3月,「産・学によるGSCの実践」のテーマのもとに,第1回グリーン・サスティナブルケミストリー東京国際会議(GSC TOKYO 2003)の開催などがあげられる.GSCNには研究推進,研究支援,情報,教育,国際協力の五つのグループが設けられている.教育グループでは大学1〜2年生を対象にしたグリーンケミストリーのテキスト〔『環境と化学−グリーンケミストリー入門』,柘植秀樹,萩野和子,竹内茂弥 編,東京化学同人(2002)〕を発行した.

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